水田農法「アイガモロボット」の可能性
先日、神奈川県藤沢市で酪農を営む方が、所有している水田に、最新モデルの「アイガモロボット2」を導入したということで、案内していただきました。今回は、伝統農法のリアルな舞台裏と、それを救う最新テクノロジーの挑戦を解説します。
日本の伝統的な「合鴨(アイガモ)農法」とは、化学肥料を一切使わない有機栽培のお米づくり(無農薬農法)ですが、実際に話を聞いてみると、その裏には想像を超える苦労がありました。
水田で作物を育て生計を立てるためには、十分な収量を確保して販売をする必要があるため広範囲の土地が必要になります。それにより、雑草や害虫駆除の労力が増してしまいます。そこで労力の負担を軽減する方法として考案されたのが、生物の力を借りる合鴨農法ですが、苗を合鴨よりも少しだけ大きくなるまで成長させたら、水田に合鴨を放ちます。
合鴨は泳ぎながら苗の間を進んでいって、水田に生えた雑草や虫を根こそぎ食べてくれます。さらに水掻きのある合鴨が泳ぐことで、水田に十分な酸素がおくられます。これにより土は柔らかくなって根が伸びやすくなり、酸素を根から取り入れることで生育がより促進されます。そのほかに合鴨が水中に糞を出すことで、有機肥料として生育に役立ち、余計な肥料を与える必要がなくなるのがメリットです。
理想の裏にある、合鴨農法「4つの苦労」
このように無農薬で美味しいお米が作れる合鴨農法ですが、実際に運用するには多くの「苦労」が存在しました。
① 毎日のモニタリングの手間
生き物相手のため、日々の体調管理やエサやりなど、目が離せない労力がかかります。ここの農家さんの場合、可愛いアイガモをみて善意で餌を与えに来る人もいるので、怠惰にならないようにも注意を払う必要もあるそうです。
② 野生動物との戦い
近くには、ぶどう園もあり、ハクビシン、アライグマ、イタチなど、可愛いアイガモを狙う天敵は多いとのこと。そのために水田の周りを「電流ネット」で囲っていました。
③ 悪質な盗難被害
しかし、悲しいことに、その電流ネットの電源ポールが過去に2度も盗難に遭うというトラブルにも見舞われたという事です。
④ シーズン後の切ない現実
お米が実り、役目を終えたアイガモたちは、殺処分等の手続きを行う必要があります。愛情を込めて育てたからこその、精神的な負担も小さくありませんし、この農家では千葉県成田のほうに輸送しているため、物理的な負担もあります。
救世主!「アイガモロボット2」の実力とは?
こうした生き物ならではの課題を解決するために導入されたのが、「アイガモロボット2」です。
実際に視察してみて、これからの農業を変える大きな手ごたえを感じることができました。注目すべきポイントは以下の4点です。
1. コストが大幅にダウン
初代のモデルに比べ、今回の「アイガモロボット2」は販売価格が約半額に。個人農家でも導入しやすい現実的なラインに進化しています。
2. 小型軽量設計
軽量設計で、重量はわずか6kg。コンパクトなサイズのため、ひとりでも簡単に持ち上げられ、田んぼへの出し入れや運搬がスムーズに行えます。
3. ソーラー駆動で完全自動走行
動力はトップに搭載されたソーラーパネル。太陽光で自給自足しながら、水田を自動でスイスイと動き回ります。泥を巻き上げて水を濁らせることで、日光を遮り、雑草の繁殖を抑える仕組みです。
4. スマホでスマート管理
ロボットが水田のどこを動いたかという走行軌跡は、スマートフォンのアプリで一元管理が可能です。離れた場所からでも、しっかり働いてくれているかが一目で分かります。
伝統を守るための「イノベーション」
生き物のアイガモが持つ「泥をかき混ぜる」「雑草を抑える」という役割を、見事にテクノロジーで再現したアイガモロボット。生き物としての命を預かる重圧や、天敵・盗難のリスクに頭を悩ませることなく、有機栽培のおいしいお米を作れる持続的未来が見えました。伝統を守るために、あえて新しい技術を取り入れる。そんな日本の農業のたくましい進化を実感した視察でした。


